空いた両手がふさがらない

カフェインで目を醒まし、アルコールで眠る

夏季休暇

 7日間の休みを取った。去年は仕事に不慣れで取り損ねていた。
 日比谷野外大音楽堂SPECIAL OTHERSのワンマンLiveに行った。実は有名な野音に行くのもはじめてのことであった。夕暮れの気温がちょうど良かった。前半は新譜中心の演奏でchill outした。すっかり暗くなった終盤、定番曲のLaurentechは大合唱状態だった。帰りに日比谷ミッドタウンでうどんを食べた。
 八景島シーパラダイスへ出かけた。横浜駅で乗り換えついでにお気に入りのラーメン屋さんで煮干しラーメンと和え玉を食べた。電車で積んでいた本(「水中の哲学者たち」)を読んだ。モノレールで八景島へ着いた。八景島というテーマパークの中心にシーパラダイスなる水族館施設が据えられている場らしい。大水槽はいつまでも観ていられた。夏休みの子どもが大量にいて人に酔ってしまった。外でソフトクリームを食べようとしたら、外気が暑すぎて手渡されたそばから自壊してしまった。諸行無常である。都内へ戻り、コロナ禍の休業を経て営業再開した行きつけの怪しい酒場に出かけた。オールドのブレンデッド2種などを飲んだ。銘柄はもう覚えていない。
 祐天寺の保護猫カフェに行った。駅からGoogleマップを手に住宅街を15分ほど歩き、なんとかマンションの一室にたどり着いた。店内は白を基調とした清潔な空間であった。昼過ぎでほとんどの猫が昼寝していたかと思えば、起きた猫はあとから入店した軟派そうなカップルに駆け寄ってしまった。意外にもドリンクのアイスラテが浅煎りで美味しかった。夜は目玉焼きを乗せた焼きそばを食べ、IKEAで買ったワイングラスにクラフトビールを注いで飲んだ。
 前職の同僚と羽田空港で待ち合わせ、ANA便で石垣島へ向かった。ジャンボジェット機は席が広く揺れにくく読書が進んだ。お互い宿と飛行機を手配したほか計画を立てておらず、かなり行き当たりばったりの旅程となった。離島行き船舶のターミナルに程近い宿へチェックインした。最終便で竹富島に渡り、西桟橋で夕暮れを眺めた。夜は地元の焼肉屋さんで食事した。2日目、朝になって島内一周のバスツアーを申し込んだ。澄んだ海、青い空、白い砂浜が広がる川平湾で小型船舶に乗り、浅瀬の珊瑚礁や沖でウミガメをみた。沖では転覆しそうなくらい船体が揺れた。ツアーの一環で鄙びた地元食堂のお店で昼ごはんを食べた。ツアーの癒着と侮っていたところ、素朴な味わいに心洗われた。昼過ぎにツアーが解散した。まだ晴れていたので小浜島へ渡った。暑すぎてレンタカーを借りて島内を一周した。だだっ広いビーチの景色を独り占めした。夜はホテル近くの郷土料理系の居酒屋で食事した。3日目、台風が接近して雨模様であった。街中のアーケードを観光中、なんとなく地元の本屋さんに入った。平積みの本のセレクトや手書きのホップなど、都心の本屋に遜色ないくらいセンスが良かった。この時期にエアコンが故障しているというA&Wハンバーガーを食べ、ルートビアを飲んだ。ルートビアイソジンを薄めて砂糖をたくさん混ぜたような味がした。雨が強まり、最後はホテルのラウンジで時間を潰すことにした。バスガイドやホテルフロントなど、観光を生業とする地元の人のプロフェッショナルに基づく温かみを感じた。余談だがホテルに服を忘れていたことに気づき、後日に着払いで送ってもらうことになった。弾丸旅行でも仕事の疲れが癒やされた。旅費に糸目をつけず良い飛行機、良い宿にして良かったと振り返る。2泊3日だと移動時間がもったいないようで、意外と空港で待ちぼうけたり機内でデジタルデトックスする時間が息抜きになった。

 旅の醍醐味は目的地だけでなく道中にあるといえる。

 休暇の最後、知人らと長瀞のオートキャンプ場に泊まった。夜はバーベキューした。材料を買って炭に火を起こして鉄板を片付けるまでの手間や面倒もまた楽しかった。

 今年の夏に思い残すことはない。

 

小浜島のビーチ